白無垢の婚礼衣裳は鎌倉~室町時代にかけて整った衣裳で、男子は直垂(ヒタタレ)や大紋・素襖(スオウ)、女子は白無垢の打掛衣裳に決まったということです。
白の打掛と白の小袖花嫁衣裳は清浄を表すことはもちろん、相手の家風に染まるということで、一度嫁入りしたら再び生家には生きて帰らぬという悲壮な決意も込められていた封建時代の考え方の表れで、婚礼当夜から3日間、花嫁は白を着て、4日後、好みの衣裳に改め、これを色直しといいました。
現代は、お色直しまですべて1日で終わらせ、その分新婚旅行に費やすようになりました。
和装の花嫁は頭に角かくしをつけています。
でもなぜ角かくしなのでしょうか?実は角かくしとは、昔、普通の女性が神に仕える聖女の象徴としてつけていたものなのです。
京都ではこれを桂巻きといいます。昔の人はかずらを髪束につける習慣を持っていて、天然の蔓草やツタ、ショウブ・フジなどを使っていました。
このかずら巻きは神が与えた自然の生命力を自分の体に引き移そうとする一種の呪術からきています。
その中にユウかずら(麻布を白くさらした布でターバンのように頭に巻くもの)があり、これが長い時代を経て、京都女性の桂巻きになります。
つまり、神に仕える神聖な女性にかわるために髪にまいたものを「かずら」と言い、それが「かつら」となり「桂巻き」になっていきました。
これが角かくしの原形です。
また、日本女性は結婚する相手以外の男性には顔を見せないという習慣を持っており、そのため角かくしなどで隠すという平安時代の露顕(ところあらわし)の変形の意味も込められています。
このような角かくしとは、神仕えの女としての形と露顕の名残をとどめた婚礼儀式の伝統的な形式なのです。